第3章 市場戦略と市場構造

[市場戦略の理論2] 事業ドメイン

企業が今、どのような事業を行っていて、今後どのような事業を行おうとしているかを定義するもの。

事業ドメインとは
 企業が提供する製品やサービスそのものが対象としている市場を、その企業の「事業ドメイン」と呼びます。同じ業界であればどの企業も同じドメインを持つとは限りません。高級車市場を事業ドメインとしている企業もあれば、それがトラック市場である企業もあるからです。
 また、多角化の進んだ企業は複数の事業ドメインを有しています。事業ドメインとは企業の戦略そのものですから、現在の対象だけでなく今後目指すべき方向性を含んで定義されます。「今どのような事業を行っていて、今後どのような事業を行おうとしているか」が事業ドメインの意味するところです。

物理的ドメインと機能的ドメイン
 先の自動車メーカーの例は、企業の物理的な側面からドメインを規定したものですが、もう一方で、機能的な側面から「人々にパーソナルな移動手段を提供すること」と規定することもできます。物理的ドメインが製品中心の考え方であるのに対し、機能的ドメインは顧客の便益に焦点を当てた考え方となっています。

ドメイン設定の重要性
 企業が事業を行っていく場合、まず最初に取り掛かるのが事業ドメインの規定です。その設定いかんにより、企業成長のスケールやスピードに大きな差が生じます。ハリウッドの映画界は自らを映画産業ではなく娯楽産業と規定し直したことにより、一時の低迷から立ち直り、発展を成しえたと言われています。警備会社であったセコムは、自らを社会システム提供企業と規定することによって、新しい事業形態を数多く開発しました。

ドメインの再定義
 これまで、事業ドメインは中長期的なものと考えられてきました。しかし、今日のように市場が急速に変化する時代においては、企業は自らのドメインを絶えず見直す必要に迫られています。変化に合わせたドメインの再定義が、新たなビジネスチャンス発掘を可能にするからです。