第3章 市場戦略と市場構造

[市場戦略の実際1] ポジショニング

特定のセグメントにおいて、他者との差別化を通じて自社の優位性を確立するための戦略。

ポジショニングと市場細分化
 市場細分化が全体市場を分割し、参入すべきセグメントを決める戦略であるのに対し、「ポジショニング」は特定のセグメントにおいて、他者との差別化を通じて自社の優位性を確立するための戦略です。企業の戦略において、両者は区別して行われる必要があります。
 ポジショニングが意図するのは、消費者の頭の中に自社の商品を他社とは明確に違ったものとして位置づけることです。情報があふれる現代において、特に食品のように新商品が続々と投入される市場においては、商品名を覚えてもらうだけでも大量の広告投入が必要です。しかしながら、適切なポジショニングは、類似品との競合を回避しながら利益を確保するための重要なコンセプトといえましょう。

ポジショニング成功のためには
 有効なポジショニングは、製品やサービスの独自性とコミュニケーション戦略の独自性があいまって、初めて可能になります。また、コミュニケーションにおいては、メッセージを単純化し、顧客の頭にすばやく、そして確実にとどまるようにすることが必要です。
 例えば、最近需要が拡大している大型バイク市場において、国産各社が同じような製品を同じように訴求しているのに対し、アメリカのハーレー社は製品の持つワイルドなイメージを前面に出したプロモーションにより独自の地位を築いています。
 一方、ドイツのBMWは、高い完成度を持つツーリング用バイクというイメージの訴求により、中高年ライダーの間で人気を得ています。
 両者とも、製品特性とコミュニケーションが相乗効果をもたらした好例といえます。