第12章 マーケティング・リサーチと解析手法

[リサーチの基本5] サンプリング

調査対象者(サンプル)を抽出する際の一連の手順。無作為抽出と有意抽出に大きく分かれる。

サンプリングとは
 調査対象者(サンプル)を抽出する際の一連の手順を指します。サンプリングは、どの対象者も母集団(調査対象層が属する集団)の中から選ばれる確率が一定かどうかで、「無作為抽出法(確率が一定)」と、「有意抽出法(確率が一定でない)」の二つに分かれます。
 無作為抽出法は、どの対象者も選ばれる確率が一定だけに、選ばれたサンプルは結果として母集団を代表することになります。だからといって、有意抽出法で抽出されたサンプルが母集団を代表していないというわけではありません。標本元の母集団がいつも明確に設定でき、使用できるとは限りませんし、有意抽出法でも割当抽出法(エリアを無作為抽出⇒エリアから割り当てたサンプルを抽出)に代表されるような、偏りをなるべく排除した方法もあります。また、グループ・インタビューでは、時として内容に精通した人といったように、恣意的な抽出をした方がよい場合もあります。サンプリング手法は、調査目的及び実際に調査を実施する際の制約も考慮しながら選択する必要があります。

サンプリングの現状
 どのようなサンプリングを選択するかの判断基準の一つに、母集団推定の厳密度があります。一般に、ここのリサーチテーマの母集団は非常に不明確な場合が多いため、母集団を厳密に推定するということは少ないのが現状です。また近年の傾向として、仮説発見や仮説検証により軸足を置いたリサーチが多くなっています。そのため、統計的な裏づけよりも、マーケティング当事者の想定した対象者をある程度集める(例:週○回以上ビールを飲む△才以上の男性□人)ことを主張したサンプリング、つまり、有意サンプリングが多くなる傾向にあります。この傾向は今後も続くものと予想されますが、その一方で、偏りの発生をできるだけ少なくする手法の研究成果が期待されます。