第3章 市場戦略と市場構造
[市場戦略の理論4] 需要予測
需要予測とその重要性
需要は市場の大きさを定量的に表したものです。企業は将来の需要や新しい市場の需要を予測した上で、想定したシェアを乗じることにより自社の売上高を推計します。その需要予測を基にして、短期的には生産計画や販売キャンペーン案の策定に、中長期的には事業ドメインや商品戦略の構築に利用します。過大な予測は過剰投資による資金繰りの悪化につながり、逆に急激な需要拡大を予測しそこなうと流通在庫不足によるチャンスロスを招きます。需要を正確に予測することは、経営の根幹に関わる重要な課題と言えましょう。
需要予測の方法
よく利用されるのは最小二乗法による需要予測です。これは需要に影響を与えると思われる幾つかの項目(説明変数)を設定し、それらの需要への影響度を統計的に求めて予測式をつくる方法です。この予測式を「回帰式」と呼び、説明変数の新しい数値を代入することで、需要を予測することができます。この手法には、説明変数を上手に選べばかなり精度の高い予測が期待できる利点がある一方、環境変化が激しい時期には、過去の因果関係だけでは将来が説明しきれず、予測がまったく当てはまらないという問題点もあります。
需要予測の方法には、ほかにも購買者意図調査の実施、専門家の意見やマーケットテストの利用といったものがありますから、それぞれの特性を知った上で、複数の方法を組み合わせた複眼的な予測を行うことが必要です。また、予測精度を高めるためには、予測と実際の需要との整合度をチェックし、手法の改善を繰り返し行うことも必要となります。