NRCレポート

ユニバーサルデザイン社会の実現度定点観測調査
【2017~2022年速報】 

~障害に対する人々の意識はどのように変化してきたか
    オリンピック・パラリンピック東京大会は何をレガシーに刻んだのか~
(2017年11月~2022年8月 6年間全7回の調査結果より)

生活・ライフスタイル

公表日 2022年11月17日

日本リサーチセンター(本社:東京都、代表取締役社長:杉原 領治)は、1960年に設立された民間の調査研究機関であり、民間企業および官公庁、大学をはじめとする学術機関などの依頼を受け、各種の調査研究をおこなっています。
 2021年夏、オリンピック・パラリンピック東京大会が開催されました。新型コロナウィルス感染症拡大により、大会の延期や縮小・中止を余儀なくされる取組等もありましたが、2020東京大会は、基本コンセプトのひとつに「多様性と調和」を掲げ、大会までの数年間、日本各地で、共生社会の実現、ユニバーサルデザイン社会の実現、心のバリアフリーの推進を目指した動きが繰り広げられました。2022年には大会終了後1年を記念したイベント等も行われ、大会のレガシーを未来につないでいくことが期待されています。
 日本リサーチセンターは、2017年から毎年、「ユニバーサルデザイン社会の実現度 定点観測調査」を実施し、社会の変化、人々の意識変化を追ってきました。最終回となる2022年は、大会開催約1年後に調査を行いました。
 東京大会は日本社会をどう変えたのか、何をレガシーに刻んだのかーー。今回、6年間の経過を速報としてお知らせいたします。
(詳細レポートは後日公開予定です。)

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  • ユニバーサルデザインとは・・・障害の有無、年齢、性別、人種等にかかわらず、多様な人々が利用しやすいようあらかじめ都市や生活環境をデザインする考え方です。
  • 障害の社会モデルとは・・・障害は個人の心身機能の障害と社会的障壁の相互作用によってつくり出されているものであり、社会的障壁を取り除くのは社会の責務であるとする考え方です。この障害の社会モデルの考え方の社会浸透状況を知ることによって、ユニバーサルデザイン社会の到達度測定を試みています。

調査結果1. 障害に対する意識

共生社会推進・ユニバーサルデザインのまちづくり推進に対する意識(8~9割台)や、障害の社会モデルへの賛同(56~69%)は、2018年に6年間の中では最高値を示したのち、東京大会開催如何にかかわらず、概ね低下の一途をたどり、2022年には、測定を開始した2017年とほぼ同レベルに戻った。

なお、2017年以降、障害に対するステレオタイプは減少し、障害の医学モデルへの賛同率も減少、心のバリアフリーの意識は、2018年以降、7割台の水準を維持している。

東京大会開催によるレガシーとなることを目指した「ユニバーサルデザインによる共生社会の実現」という目標に関して、ユニバーサルデザイン社会の根幹となる「障害の社会モデル」は、大会開催によって定着することはなかった。2018年の最高値以降、社会的障壁に関する理解低下が進行し続けていることが危惧される。

   

  

社会のあり方に対する考え 

(そう思う計)

共生社会推進に対する賛同は、共生社会推進意識は大会直後までは9割台を保ったものの、会期1年後には9割弱に低下。ユニバーサルデザインの街づくり推進意識は、会期直前に再上昇したものの、大会直後から低下がはじまった。

【2022年8月】 

共生社会推進への賛同率(88.7%)、ユニバーサルデザインのまちづくり推進への賛同率(84.3%)は、8割半~9割弱で高い。

【6年間の推移】 

共生社会推進への賛同率、ユニバーサルデザインのまちづくり推進への賛同率ともに最高値は2018年で、それに比べると2022年はいずれも約5ポイント低い。共生社会推進への賛同率、ユニバーサルデザインのまちづくり推進への賛同率ともに2017年とほぼ同程度のスコアとなっており、2018年に一度上昇したものの、その後の5年間で元の水準に戻った。

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  • 心のバリアフリー 

    (そう思う計)

    6年間の最高値は2018年で、それよりやや下がりながらも以降概ね同水準で推移している。

    【2022年8月】 

  • 「障害のある人が困っているときには、迷わず援助できる」(75.8%)、「障害のある人を自分たちの仲間に入れることに抵抗感はない」(70.9%)との心のバリアフリー意識は、ともに7割台で高い。

    【6年間の推移】 

  • 心のバリアフリー意識はいずれも最高値は2018年で、それに比べると2022年はいずれも約2ポイント低いが、ほぼ同水準を保ち推移してきている。

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  • 障害者に対するステレオタイプ 

    (そう思う計 ※反転項目)
  • 2018年には5割弱の人が持っていた「かわいそう」とのステレオタイプは、徐々に減少し、2021年以降約4割程度に下がった。
    2017年には約4割の人が持っていた「一方的に助けられるべき」とのステレオタイプは、2020年まで徐々に下がっていたが、会期直前の2021年に再び約4割に上昇し、その後低下した。会期直前に上昇した現象に着目すると、東京大会開催の社会的メッセージがステレオタイプ解消には働かなかった可能性も考えられる。

    【2022年8月】

  •  「障害のあることはかわいそうだと思う」(40.6%)、「障害のある人は一方的に助けられるべき存在だと思う」(33.3%)との障害者に対するステレオタイプは3割強~4割。

    【6年間の推移】 

  • 「障害のあることはかわいそうだと思う」は、2021年12月が最低値で、2022年も同水準。最高値だった2018年と比べると7ポイント低い。「障害のある人は一方的に助けられるべき存在だと思う」は、2022年が最低値で、最高値の2017年と比べると7ポイント低い。障害者に対する2つのステレオタイプはともにこの6年間で減少してきている。

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  • 障害の捉え方 

    (そう思う計 ※障害の医学モデル:反転項目)

    障害の社会モデル:6年間の最高値は2018年の69%で、それ以降、概ね下降トレンドをたどり、会期直後の2021年12月の賛同率は6年間で最低レベルに落ち込んだのち、2022年は2017年と同レベルに戻った。

    障害の医学モデル:概ね6年間で徐々に賛同率減少の経過をたどり、会期直後の2021年12月は賛同率が最低値(24%)を示した。

    【2022年8月】

  • 障害の社会モデルへの賛同率(61.9%)は6割強に対し、障害の医学モデルへの賛同率(25.4%)は2割半。

    【6年間の推移】  

  • 障害の社会モデルへの賛同率は、過去6年間上下動が見られ、最高値は2018年の68.5%、最低値は2021年12月の56.3%で、2022年(61.9%)はそのほぼ中間値。障害の医学モデルへの賛同率は、最低値が202112月の23.7%で、2022年(25.4%)はほぼ同程度で推移。

  • この6年間で、障害の社会モデルへの賛同率は7割弱を上限に伸びることはなく下降傾向をたどっているが、障害の医学モデルへの賛同率は6年間で徐々に減少してきたと読み取れる。

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 [問1 下記について、あなたの考えとして、もっとも近いと思うものに〇をつけてください。
  選択肢:非常にそう思う、そう思う、ややそう思う、どちらでもない、あまりそう思わない、まったくそう思わない]

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調査結果2.共生社会の実現度合評価

(0点(全く実現していない)~10点(完全に実現している)スケール)

 

2022年の平均得点(10点満点)は、過去6年間の調査の中で最低値の3.9点。2017年以降、共生社会が実現しているとの認識は低いまま推移し、ほとんど変化せず。

【2022年8月】

日本の共生社会実現レベル(10点満点評価の平均値) は、6年間で最低の3.9点。中央(5点)よりも低い採点者は59.1%で、6年間で最高値。

【6年間の推移】 

過去6年間の評点は平均3.9~4.2点でほとんど変化せず、共生社会が実現しているとの認識は低いまま推移している。中央(5点)よりも低い採点者がいずれの年も半数を超え(04点計5割強~6割弱)、過半数の人々は、この6年間、日本では共生社会が実現できていないと考えている。

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 [問 いまの日本の社会は、どの程度、「障害の有無にかかわらず、女性も男性も、高齢者も若者も、すべての人がお互いの人権や尊厳を大切にし支え合い、誰もが生き生きとした人生を享受することのできる共生社会」を実現していると思いますか。 0~10までの11段階でお答えください。(○は1つだけ)
  選択肢:0全く実現していない ~ 10完全に実現している]

 

  

調査結果3.「障害の社会モデル」の認知状況(2022年)

 

「障害の社会モデル」という言葉の認知は、内容について知っている人はわずかに1.7%、名前を聞いたことがある程度(21.4%)を含めた認知合計は23.1%。四分の三の人に認知されていない。

 

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調査概要

調査方法    NOS(日本リサーチセンター・オムニバス・サーベイ:定期的に実施する乗り合い形式の全国調査)        

        調査員による個別訪問留置調査
調査対象    全国の15〜79歳男女個人
有効回収数   1,200人 ※エリア・都市規模と性年代構成は、日本の人口構成比に合致するよう割付実施
サンプリング  全国から200地点を抽出、住宅地図データベースから世帯を抽出し、個人を割り当て
調査期間    2022年7月29日~8月12日

 

■2021年までの関連調査の結果は、下記をご参照ください。

ユニバーサルデザイン社会の実現度定点観測調査 第6回調査(2021年12月)

ユニバーサルデザイン社会の実現度定点観測調査 第5回調査(2021年6月)

ユニバーサルデザイン社会の実現度 定点観測調査 第4回調査(2020年)

ユニバーサルデザイン社会の実現度 定点観測調査 第3回調査(2019年)

ユニバーサルデザイン社会の実現度 定点観測調査 第2回調査(2018年)

ユニバーサルデザイン理解・浸透度 定点観測調査 第1回調査(2017年)

ユニバーサルデザインのまちづくりはどの程度進んでいると考えられているか~ユニバーサルデザイン調査2020~

ユニバーサルデザインのまちづくりはどの程度進んでいると考えられているか~ユニバーサルデザイン調査2019~

障害のある人の政治参加と就労・就学に関する調査(2019年)


NOS(日本リサーチセンター・オムニバス・サーベイ)とは

NOSとは、定期的に実施する乗り合い形式(オムニバス)の全国調査です。調査員が、ランダムに決められた地点で対象となるお宅を訪問し、1,200票を回収しています。
インターネットやパネルを使って簡単に調査ができる時代になりましたが、NOSでは50年以上にわたり、サンプリングにこだわって代表性と信頼性の高い安定したデータを収集しています。
複数調査の乗り合い形式のため、単独で実施する場合に比べて費用が割安です。

※ご依頼・ご相談は、ホームページの「お問い合わせ」よりご連絡ください。

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