第1章 マーケティングの変遷とその概念
[コラム ―マーケティングこぼれ話― マーケティング不信=消費不振]
今日の消費不振の背景には、消費者のマーケティング不信が根底にあり、それが消費「不信」を生み、結果として消費「不振」に結びついているのではないかと思われます。
マーケティング不信の第1は、モノづくりに対する不信です。これまでのモノづくりコンセプトが、消費者のより便利で快適な生活の実現に必ずしも結びついていないという不信、つまりメーカーへの不信です。第2はモノの売り方に対する不信です。これは、主に小売業者に向けられたものです。すなわち消費者の購入代理人として、本当に消費者の視点から品揃えを行っているのかという不信です。これに加え、販売スタッフによって価格が異なったり、すぐに価格がディスカウントされるなど、価格の決め方に対する不信もあります。そして第3の不信は、消費するヒト、つまり、消費者自身に向けられた不信です。ある商品を選択し、その商品を購入しようと思ったときに、あまりにもイージーに行動してきたのではないかという、ある種の自己嫌悪です。
しばしば、“賢い消費者”といった表現が使われますが、この言葉の本当の意味は、以上のような不信感を通じて、自己の消費態度を学習した消費者ということになります。
これからのマーケティングは、このような“賢い消費者”が相手となります。だから、これら3つの不信感にしっかりと応えられるような施策でなければなりません。
新しいマーケティングというと、すぐにインターネット・マーケティングが議論の対象になりがちですが、大事なことは、新しい手法が、消費者視点を実現できるものなのかどうかという点です。「知ることと知らせること」というマーケティングの原点に立ち返った上で、このインターネット・マーケティングについての議論がなされるのであれば、それは限りなく新しい可能性を提示してくれることになるでしょう。