第2章 マーケティングと企業戦略
[業態別戦略1] メーカーのマーケティング
マーケット・インの商品開発
メーカーで最も重要なマーケティング活動は、商品開発です。営業力が強くても、広告宣伝が上手でも、商品力が優れていなければ売れません。
商品開発の最も重要な要素は「いかにして消費者が求める商品を作るか」というマーケット・インの発想です。「売れるはずだと思って作った商品をいかにして売り込むか」といったプロダクト・アウトの発想は通用しません。そのためには、顧客の現実の欲求(ニーズ)及び潜在的な欲求(ウォンツ)を満たすことが不可欠となります。
しかし、一般的にはメーカーが直接消費者と接触することはありません。つまり消費者の声を直接聞く機会がほとんどないのです。そこで、顧客からの苦情を直接受け付ける相談センターを設置したり、販売店と連携してPOS(販売時点)情報をリアルタイムで収集するなど、顧客との距離を縮める仕掛けを用意する必要があります。
こうして収集した顧客に関するさまざまな情報を分析することによって抽出された顧客のニーズやウォンツに基づいて、新商品を開発するのです。
告知活動と流通チャネル選定
商品開発の次に重要なマーケティング機能は、告知活動と流通チャネルです。せっかく優れた商品を開発しても、消費者に告知して購買意欲を喚起しなければ売れませんし、消費者が購入したいと思っても、ターゲットとなる消費者が利用しやすい流通チャネルに流さなければ、売上は伸びません。
商品開発から告知活動・流通チャネルまでを一貫した戦略で実施したデルコンピュータの場合、すでにパソコンを持っている層をメインターゲットに、インターネットを介して顧客が要望するスペック(仕様)に基づいて生産し、顧客に直送するという直販方式を中心に急速に成長しました。