第3章 市場戦略と市場構造
[市場構造の理論と実際2] 事業ポートフォリオ・マネジメント(PPM)
戦略事業単位
企業を構成し、それぞれ独立した戦略の下に運営される単位を「戦略事業単位(SBU)」といいます。鉄道会社を例にとると、鉄道事業のほかに、百貨店、不動産、旅行代理店などのSBUを運営するケースが見られます。各事業単位の状況を見定め、それぞれに適切な対応を図ることは、企業にとって最も重要な行動のひとつです。
事業ポートフォリオ
SBUをサポートするツールとして、事業ポートフォリオがあります。ここでは、縦軸に「市場の魅力度」を示す市場成長率を、横軸に「当該事業の地位」を示す相対市場シェアをとることで、各SBUを4つのカテゴリーに分類しています。企業は、まず自社のSBUがどのカテゴリーに含まれるかを評価し、次に各SBUの今後の方向性を検討します。企業の収益を支えるのが「金のなる事業」で、その資金を「花形(スター)事業」の育成に回すことになります。また、多くのSBUはそのライフサイクルに従って「問題児事業→花形事業→金のなる木事業→負け犬事業」と移動することから、将来に向けて常に「問題児事業」を開発する必要があります。また「負け犬事業」については撤退や売却などの対策を検討します。
実践への適用
ポートフォリオを現実の戦略に適応するためには、市場の魅力度と自社の地位について包括的に捉える必要があります。市場魅力度は成長率に加えて、市場規模・競争度・収益率などの視点で、自社の地位は相対シェアに加えて価格競争力・品質・ブランド力・顧客満足度などの視点で評価します。各SBUのポートフォリオ上の位置は、複数の評価基準をその重要度に応じて加重平均して求めます。