第3章 市場戦略と市場構造
[市場戦略の実際3] テスト・マーケティング
テスト・マーケティング
新商品の導入時には、製品開発費だけでなく、ネーミング・広告宣伝・プロモーションなどの導入マーケティングに多大な費用が投じられます。企業は失敗のリスクを軽減するため、製品やマーケティング・プログラムの有効性を事前にテストします。これを「テスト・マーケティング」と呼び、手法によりふたつに分類されます。
実市場でのテスト・マーケティング
特定の地域において全国販売と同じ状況でテストする手法です。具体的には、少数の代表的な都市を選んだ上で本格的な導入マーケティングを実施し、調査などにより成果を評価するものです。
実際の市場でテストするだけに精度の高い評価が得られる反面、結果を得るまでに多大な時間と費用がかかることになります。更に、全国展開する前に競合他社が新製品を認知してしまうなどのデメリットも持っています。
シミュレーションによるテスト・マーケティング
模擬的な買物環境の中で新製品をテストすることも行われています。有名なのがマサチューセッツ工科大学が開発した「アセッサー」というシステムで、完成した試作品を模擬店舗でテストすることで、そのマーケティング・シェアを予測しようとするものです。
具体的には、@テスト会場を設営して実際の購入行動を観察するA新製品を家庭へ持ち帰って使用してもらうB事後調査で再購入の確認を行う――というステップで行われます。日用雑貨や食品など頻繁に購買が発生する消費財に適した手法と言われています。
シミュレーションによるテストは実市場でのテストに比べると時間・コストともに大幅に削減できる上に、競合他社に認知されるリスクもほとんどないという優れた点を持っています。反面、評価する対象者の数が限られていることや、あくまでも模擬的な買物環境であるため実市場とは本質的な違いがあるという課題も残ります。