第5章 価格設定と価格管理
[価格設定] 消費者志向と価格設定
消費者志向
バブル経済崩壊を経て、メーカーや小売など売り手の論理に基づく一方的な価格設定では、消費者は商品を買ってくれなくなりました。
現代の消費者はモノやサービスを購入することでもたらされる、その商品の総合的な価値が、代価として支払う価格と等価以上かどうかを吟味し、その上で競合商品とも比較検討します。インターネットに代表される情報の大衆化がこうした吟味・比較をさらに容易にしています。
すなわち、現在では価格の決定権は生産者ではなく、あくまで消費者にあることを十分認識し、消費者の期待する価格レベルがどこにあるのかを出発点に価格を設定することが求められます。これを「消費者志向」といいます。したがって、価格が消費者の期待レベルに見合わない場合には、原価低減などの企業努力が求められることになります。
価格設定のポイント
価格設定方法は、@費用(コスト)A需要B競争――のうちどれを最も重視するかにより異なります。「費用」を重視するコスト・プラス法による価格設定は、生産者志向の価格設定方法です。また「競争」重視型の価格設定では、市場の実勢価格と横並びに価格を設定する実勢価格設定法などが代表的ですが、どちらも消費者志向とはいえません。
現代の消費者志向のマーケティングにあっては、あくまで消費者が、その商品がもたらす価値の代価としていくらなら購入してくれるか、言い換えれば消費者が共感できる価値をどれだけ提供しているか(「需要」の把握)を客観的に判断して価格設定を行うことが基本です。
すなわち需要が、コストや競合状況よりも優先されるべきなのです。消費者が期待する価値を、消費者が支持する価格で提供できるかどうかが、これからの市場における勝者の条件となるのです。