第10章 消費者意識と購買行動

[消費者意識1] 消費者と生活者

消費者を理解するには、消費者を生活者としてとらえ、その意識を把握することが重要だ。

消費者とは
 「商品やサービスの購入者・購入決定者」または「企業が供給する商品やサービスの、最終的な使用者」を指します。
 企業が「モノをつくれば売れる」といわれた高度経済成長期やバブル期のような時代には、消費者行動の中心は「欲しいモノを買うこと」や「憧れのブランドを選ぶこと」でした。そのため、この時期のマーケティング戦略は、“先にモノ(商品)ありき”による企業主導のものとなりがちでした。
 しかし、その後、消費者の物欲が満たされてくると消費欲求は充足し、飽和状態となります。この状態を迎えた次なる消費欲求の中心は、購入した商品を「生活の中でどのように活用するのか」「自分らしさをどのように表現できるのか」という発想に変わってきました。個々人が消費者というよりは生活者として、自らの考え方や意識、価値観を、消費を通じて示していくことになったわけです。

生活者を意識したマーケティング
 消費者を生活者として認識することは、マーケティング上の価値転換を求めることになりました。生活者としての価値観は、例えば環境問題や人間の身体への影響といった、消費とは直接関係のない分野も含んだ人間生活全般の充実に、その重点が置かれるようになります。その結果、現代マーケティングは、このような生活者としての価値観を最優先しつつ、社会にも貢献しうるような商品・サービスを提供することが必須となってきています。

生活者の意識をとらえる
 マーケティングの基本は“消費者を知る”ことです。そして、消費行動を自分の暮らし方表現の一つとして強く意識している現代の消費者の意識を知るためには、「消費者が欲しいもの(商品)」ではなく、「生活者として、実現したいこと、やってみたいこと」の把握がより重要となってくるのです。