第10章 消費者意識と購買行動
[消費者意識6] 階層意識
一億総中流意識時代
高度経済成長期以来、日本人の多くは自分を「中流」と考えているといわれてきました。その背景には、誰もが同じような耐久消費財の保有を目指し、教育を受けることが可能であったり、衣服や日用品などの支出の傾向も似通っているという、社会的な特質がありました。このように生活形態が均質化していたことが、「自分は人並みだ」という意識の形成に結び付いてきたのです。
消費者の階層化
ところで、この中流意識には分化傾向がみられるようになります。主に地価の高騰や住宅取得費用の高騰に伴い、資産を持つ者と持たない者の間の意識が上下に分化し、消費実態に差がつき始めたのです。資産にゆとりがある者は、より高価なものを所有したいという志向が強まる傾向がみられますが、資産のない者は限定された範囲内で必要なものを購買していくことになり、二者間の購買力や意識に大きな差が生じるわけです。
また、中流意識を持つ層から分化した人々の中には、ニュープアと呼ばれる層があります。この層は、食べるのに困るほどの貧困層ではありませんが、ゆとりある生活をしているわけではありません。ゆとりがないからこそ、商品に関する情報収集は怠らず、良い物を見分ける眼も自分なりに鍛えているのがニュープア層の特徴です。こうした選択眼の有無も階層化の一つの要因となります。
情報保有による階層化
最近注目されている階層化要因の一つに、情報保有があります。これはインターネットの普及によって、人々は情報を持つ者、持たざる者≠ノ分化するというもので、「デジタル・デバイド」と呼ばれています。インターネットを使いこなす者ほど、商品・サービスの購入機会が拡大し、さらには、より安く、より良い物を購入できる可能性も高まるとみられるからです。