第10章 消費者意識と購買行動
[購買行動9] 商品のボーダーレス化
薄れる男女の性差意識
昨今、若者の間では急速に男女の性差意識が薄れつつあるといわれます。
その傾向が顕著にいられるのが衣料品の分野で、市場の3割を、男女兼用の“ユニセックス商品”が占めています。こうした現象の背景には、若者が「男らしさ」「女らしさ」を意識しなくなってきており、他人にどう思われるかより、自分の着たいもの、したいことを追求する傾向が強まってきていることがあります。そして、基準としての「男らしさ」「女らしさ」の概念さえも消滅しつつあるのです。
商品のボーダーレス化現象
男女の性別役割意識の減少を発端として、商品自体に男性用・女性用といった区別がなくなっている現状−いわば“商品のボーダーレス化現象”−が多様な分野で拡大しています。
まず、衣料品業界では特にカジュアルウェアの分野での浸透が著しく、安価なフリースジャケットやカットソーのような、誰でも着られるシンプルなデザインの商品のその傾向が顕著にみられます。また化粧品業界では、男女兼用にフレグランスや男性がマユを整えるための「アイブローキット」が好調な売行きを示すといった現象がみられています。さらには、男性歓迎のエステサロンや女性の来店を意識した理髪店の出現など、サービス商品の分野でも、ボーダーレス化の傾向がみられています。
浸透するボーダーレス化現象
最近では高齢化の進展により、身体的障害や体型に関係なく着ることができ、デザイン面でも優れた洋服が開発されるなど、性差のみならず年齢差等も意識させないような商品づくりが進んでいます。さらに、インターネットの普及による急速な情報化社会の発展は、個々の性別・年齢を表面化させずに物事が進行することを可能にしています。こうして、人間の意識上でのボーダーレス化は、情報化社会が発展するほど、いっそう浸透していくことが予想されます。