第12章 マーケティング・リサーチと解析手法
[リサーチ手法5] 観察調査
観察調査とは
文字通り対象者を直接現場で観察し、そこから事実データを得るデータ収集法の一つです。例としては、「小売店の来店客数は何人か」「ある商品の小売店の店頭価格はいくらか」といったことをリサーチするのによく使われます。従来は、調査員が記録をとる方法(通行量調査など)が多かったのですが、最近の情報技術の進歩を反映して、コンピュータを使用して記録をとる方式(視聴率調査など)が種々開発されています。
観察調査のメリット
観察調査のメリットは、事実情報の精度の高さにあります。例えば商品陳列が来店客に与える影響を知るには、アンケートで商品陳列について質問することで収集することもできますが、観察調査を実施することによって、より事実に即した正確なデータを得ることができます。また、調査担当者がその現場を観察することによって、現状を深く理解できたり、思いがけない発見を得られることも期待できます。近年、情報技術の発達の後押しもあって、観察調査は様々な方法が高まることが予想されます。
観察調査のデメリット
反面、調査担当者は、「なぜそのような事実が起こったのか」「どのような理由によって、そのような行動が引き起こされたのか」などという、事実を引き起こす背景や理由に関するデータは、観察調査から直接得ることはできません。そのため、そうした部分は調査担当者の解釈にゆだねられる部分が多くなり、調査担当者の力量によってデータの価値が決まってしまう傾向にあります。また、「来店客の具体的な行動パターン」といったように、個々のデータをパターン化し情報化するような場合にも、どのレベル、どの内容までを情報コード化すべきかといったことは、調査担当者の判断に依存することになります。