第12章 マーケティング・リサーチと解析手法

[解析手法3] 多変量解析

調査から得られる多種多様な回答結果の相互関係を、目的に応じて理解しやすい形に整理する。

多変量解析とは
 文字通り「多くの変量の相互関係などを解析する」ことを意味しますが、ここでいう“変量”とは、アンケート調査でいえば個々の質問を示すことになります。そして、その一つの質問(変量)の単純集計結果や特性値(平均値等)などからその変量の構造を把握するのが、一次元変量の解析です。また、二つの変量を組み合せたクロス集計結果や相関係数などを利用してその構造を解析することは、二次元変量の解析といえます。さらに変量の構造を詳しく把握するために、変量数を増やして三次元以上の変量を解析するとなると、変数間の関係が複雑になり、今まで述べたようなやり方(クロス集計等)で相互の関係を把握することは困難となってきます。そのため、統計数学の力を借りて多変量間に存在する複雑な関係を整理・単純化し、その因果関係を我々が理解しやすい形に整理する解析手法→多変量解析が考え出されました。

多変量解析の目的
 多変量解析を実施する目的は、大きく、@複数の変量の分類・整理、A変量間の因果関係の解明という二つに大別されます。車市場を例にして説明しましょう。

複数の変量の分類・整理
 世の中に存在する多種多様の車を、似ている車と似ていない車に分類・整理することによって、車市場の状況を把握するといったケースがこれに該当します。具体的には、変量間を貫く分析軸を抽出し、それらの軸を基にした二次元の平面空間に各車を位置づけ(ポジショニング)、類似性という点から車市場をいくつかに細分化する(セグメンテーション)といったプロセスをとることになります。この種の多変量解析手法は、マーケティング戦略を立案する際の現状認識・仮説設定のための分析手法として多く用いられています。
 
変量間の因果関係の解明
 車の総合評価に影響を与えているのは、車のどのような要素なのかを明らかにするといったケースが該当します。つまり、総合評価という結果と、総合評価を下す要因となっている諸情報との因果関係を知ろうというものです。この場合の諸情報としては、車の価格やデザイン、性能、機能などといったものが考えられますが、どのような変量を何個用意するかは分析者の判断によります。そのため、多変量解析によって明らかとなった因果関係(モデル)が、現実の市場に対してどの程度の説明力をもっているか十分議論する必要があります。ちなみに多変量解析では、結果として扱う変量を基準変数(ここでは諸情報)と呼んでいます。また、明らかになった因果関係を使って、説明変数に任意の値を代入し、基準変数の予測に使用することもできます。