NRCレポート

ユニバーサルデザイン社会の実現度 定点観測調査

第3回調査(2019年9月調査結果)~障害の社会モデルは日本社会にどこまで浸透しているか~
時事・トレンド 生活・ライフスタイル

公表日 2019年12月26日

日本リサーチセンター(本社:東京都、代表取締役社長:鈴木稲博)は、1960年に設立された民間の調査研究機関であり、民間企業および官公庁、大学をはじめとする学術機関などの依頼を受け、各種の調査研究をおこなっています。
 この度、当社の自主調査として、「ユニバーサルデザイン社会の実現度 定点観測調査 ~障害の社会モデルは日本社会にどこまで浸透しているか~」第3回調査を実施し、その結果概要をまとめた中間レポートを発表いたします(分析も加えた最終レポートは近日中に発表予定です)。

調査実施の背景と目的

2020年に向けて全国各地で心のバリアフリーを広める取り組み、誰もが安全で快適に移動できるユニバーサルデザインのまちづくりが進みつつあります。弊社では、この間の人々の意識の動き、社会の動きをキャッチし、社会の記録として残していきたいと考え、2017年から2021年までの5年にわたる定点観測調査を企画しました。

調査を通じて、「障害の社会モデルの考え方は日本社会にどこまで浸透していくのか」、歴史的なイベントである「2020年東京大会はユニバーサルデザイン社会の実現というレガシーを残すことができるのか」ということを明らかにしていきたいと考えます。

  • ユニバーサルデザインとは・・・障害の有無、年齢、性別、人種等にかかわらず、多様な人々が利用しやすいようあらかじめ都市や生活環境をデザインする考え方です。
  • 障害の社会モデルとは・・・障害は個人の心身機能の障害と社会的障壁の相互作用によってつくり出されているものであり、社会的障壁を取り除くのは社会の責務であるとする考え方です。この障害の社会モデルの考え方が人々にどの程度理解・浸透しているかを知ることによって、ユニバーサルデザイン社会の到達度を知ることができると考え、調査設計しています。

主な調査項目

  • 1.障害理解の実態
    (社会のあり方に関する考え、障害・障害者に対する意識、障害の医学モデル・障害の社会モデルへの賛同状況)
  • 2.社会的障壁に接した場面での行動イメージ

  • 3.共生社会実現度合評価 

調査結果の要約

●障害理解の実態

【2019年の結果】 (そう思う計)

  • 社会のあり方に対する考え:
    共生社会推進への賛同率(障害の有無にかかわらず、女性も男性も、高齢者も若者も、すべての人がお互いの人権や尊厳を大切にし支え合い、誰もが生き生きとした人生を享受することのできる共生社会を実現すべきだと思う 93.4%)、ユニバーサルデザインのまちづくり推進への賛同率(障害の有無、年齢、性別、人種等にかかわらず、多様な人々が利用しやすいよう、あらかじめ都市や生活環境をデザインすべきだと思う 88.6%)は9割前後と高水準。
  • 心のバリアフリー:
    障害者への援助行動(障害のある人が困っているときには、迷わず援助できる 77.3%)、仲間に入れることに抵抗感なし(障害のある人を自分たちの仲間に入れることに抵抗感はない 72.6%)はともに7割台と高い。
    障害問題への無関心者は約1割(障害の問題は、自分にはかかわりがない 10.3%)。
  • 障害者に対するステレオタイプ:
    「障害のあることはかわいそうだと思う」(46.4%)、「障害のある人は一方的に助けられるべき存在だと思う」(36.8%)といった障害者に対するステレオタイプを持つ人は4割弱~5割弱程度。
  • 障害の捉え方:
    障害の社会モデルへの賛同率(障害は、個人の心身機能の障害と社会的障壁の相互作用によってつくり出されているものであり、社会的障壁を取り除くのは社会の責務である 68.0%)は7割弱である一方、障害の医学モデルへの賛同率(障害は、病気や外傷等から生じる個人の問題であり、障害の原因を除去・対処するには、治療や訓練等もっぱら個人の適応努力が必要である 34.2%)は約3割半。

2017年~2019年への時系列変化】 

  • 共生社会推進、ユニバーサルデザインのまちづくり推進への賛同、心のバリアフリー、障害の社会モデルへの賛同はいずれも、2017年~2018年の1年間で有意に増加したのち、2018年~2019年はいずれも同水準で横ばいとなった。
    ユニバーサルデザイン社会を実現しようとする人々の意識、心のバリアフリー意識は、2017年以降一定程度に高まりを見せたものの、心のバリアフリーは7割台のレベル、障害の社会モデルへの賛同は7割弱のレベルで止まっている。
  • 「障害のある人は一方的に助けられるべき存在」とするステレオタイプは下降の兆しがみられるものの、「障害のあることはかわいそう」とするステレオタイプは4割台で変化が見られず、この3年間で減少することはなかった。
    また、障害の医学モデルに対する賛同も約3割程度存在したままで、この3年間で減少することはなかった
  • 2020年に向かう3年間の中で、共生社会、ユニバーサルデザイン、心のバリアフリーといった社会的望ましさを伴う理念に対しての意識はおおむね好転傾向にある一方で、障害者に対するステレオタイプや、障害の原因をもっぱら個人に帰結させる旧来の障害観である障害の医学モデルに関しては、明らかな低下は認められなかった。

●社会的障壁に接した場面での行動イメージ

混雑したショッピングモールでの買物場面の事例

【2019年の結果】 (単数回答で「そう思う」との回答比率)

  • 改善責任の認識:
    「すべての人が安全快適に買い物できる店をつくるのは当たり前のことなので、店はこの状況を改善する必要がある」との、設置者(店)側の改善責任を感じている人は約8割(81.4%)にのぼる。
  • ハード面・ソフト面による解決:
    解決方法に関する意見として、「狭い通路の売り場をつくらないようにするのがよい」とのハード面での解決方法(88.1%)、「混雑時は、店側がお客様を順番に少しずつ店内に誘導するなど、誰もが買物できるようにするのがよい」とのソフト面での解決方法(80.0%)が、ともに8割台で多い。
    「近くにいる客として、自分が、車いすや乳幼児連れの人に手助けが必要かを聞き、手伝いたい」と、自身がサポートすることによる解決方法は7割弱(68.6%)であった。
  • 分離による解決:
    「車いすや乳幼児連れの人は混雑した場所に来ないほうがよい」との考えは24.8%、「一般客とは別に、専用の売り場を設けるのがよい」は23.3%、「一般客とは別に、買い物時間帯を設けるのがよい」は17.3%であった。
    社会的障壁発生場面において、障害者を社会場面から分離することによる解決策に賛同する人は2割前後の一定数存在している。
  • 社会への働きかけ:
    「店舗づくりや施設に関して不備に気づいたら、気づいた自分が店舗に改善提案をしていきたい」との考えは、42.4%。社会的障壁を取り除くためのアクションとして自らが社会への働きかけを行う意識がある人は、約4割みられる。

●共生社会の実現度合評価

2019年の結果】 

2019年の日本の共生社会実現レベル(平均値)は10点満点中4.1

    • 中央(5点)よりも低い採点者が半数を超え(0~4点計57.8%)、大半の人が、2019年時点の日本は共生社会が実現できていないと考えている。

    2017年~2019年への時系列変化】 

      • 日本の共生社会実現レベル(平均値) は、2017年・2018年はともに4.0点、20194.1点。
        3
        年間を通じて、共生社会が実現しているとの認識は低いまま推移し、ほとんど変化せず。

    調査概要

    調査方法
     NOS(日本リサーチセンター・オムニバス・サーベイ:毎月1回定期的に実施する乗り合い形式の全国調査)調査員
     による個別訪問留置調査
    調査対象
     全国の15〜79歳男女個人
    有効回収数
     1,200人(サンプル)
     ※エリア・都市規模と性年代構成は、日本の人口構成比に合致するよう割付実施
    サンプリング
     毎月200地点を抽出、住宅地図データベースから世帯を抽出し、個人を割り当て
    調査期間
     2019年8月30日~9月11日

    ■詳細は、下記中間レポート(PDFファイル)をご参照ください。

    ユニバーサルデザイン社会の実現度定点観測調査_第3回(2019年)中間レポート.pdf

    <参考:障害についての意識やユニバーサルデザイン、共生社会関連の日本リサーチセンターの自主調査>

    ユニバーサルデザイン調査2019_ユニバーサルデザインのまちづくりはどの程度進んでいると考えられているか_レポート.pdf

    2019年障害のある人の政治参加と就労・就学に関する調査レポート.pdf

    ユニバーサルデザイン社会の実現度定点観測調査_第2回(2018年)調査レポート.pdf

    ユニバーサルデザイン理解浸透度定点観測調査_第1回(2017年)調査レポート.pdf



    NOS(日本リサーチセンター・オムニバス・サーベイ)とは


    調査パネルを使ってインターネットで簡単に情報収集できる時代になりましたが、NOSでは、50年にわたって、
    (1)調査員を使った訪問留置
    (2)パネルモニターではない毎回抽出方式
    で調査を継続しており、代表性のある信頼の高いデータを提供しております。
    NOSは、毎月1回定期的に実施する乗り合い形式(オムニバス)の調査です。毎回ランダムに決められた200地点にて、対象となる方に調査員が協力を依頼してアンケートを回収します。性年代構成を日本の人口構成比に合わせているため、全体結果は日本を代表する意見として、そのままご覧になることができます。インターネット調査では、回収が難しい高齢層やインターネットを使っていない人の実態や意識を分析するのにも有用な手法と言えます。

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