NRCレポート

ユニバーサルデザイン社会の実現度定点観測調査
【東京大会直前速報】 

~この5年間で障害に対する人々の意識はどのように変化してきたか 、
 オリンピック・パラリンピック東京大会は何をレガシーに刻むか~
(2017年~2021年6月までの調査結果より)

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公表日 2021年07月21日

日本リサーチセンター(本社:東京都、代表取締役社長:杉原 領治)は、1960年に設立された民間の調査研究機関であり、民間企業および官公庁、大学をはじめとする学術機関などの依頼を受け、各種の調査研究をおこなっています。
 いよいよオリンピック・パラリンピック東京大会が開幕します。東京大会の開催は社会にどのような変化をもたらし、何をレガシーとして刻むのでしょうか。オリンピック憲章にも示され、東京2020大会ビジョンの基本コンセプトの一つである「多様性と調和」は、人々にどのように浸透したでしょうか。
 弊社では、2017年から毎年「ユニバーサルデザイン社会の実現度 定点観測調査 ~障害の社会モデルは日本社会にどこまで浸透しているか~」を実施してきました。2021年は大会開催前後(6月、12月)での調査を行ってまいります。
 本日、東京大会開催直前の速報として、2021年6月までの5年間の経過をご報告いたします(2021年12月調査結果は、2022年1月頃公表予定です)。

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  • ユニバーサルデザインとは・・・障害の有無、年齢、性別、人種等にかかわらず、多様な人々が利用しやすいようあらかじめ都市や生活環境をデザインする考え方です。
  • 障害の社会モデルとは・・・障害は個人の心身機能の障害と社会的障壁の相互作用によってつくり出されているものであり、社会的障壁を取り除くのは社会の責務であるとする考え方です。この障害の社会モデルの考え方の社会浸透状況を知ることによって、ユニバーサルデザイン社会の到達度測定を試みています。

調査結果1. 障害に対する意識(主要部分抜粋)

要旨:

ユニバーサルデザイン社会を実現しようとする人々の意識、心のバリアフリー意識は2017年から2018年に一定程度の高まりを見せたあと、2019年から2020年にかけて減少した(逆U字型カーブ)。

その後、2020年から20216月にかけて再び上昇の傾向が見られる。

 

社会のあり方に対する考え (そう思う計)

【2021年6月】 

共生社会推進への賛同率(90.7%)、ユニバーサルデザインのまちづくり推進への賛同率(87.8%)は、約9割と高水準。
5年間の推移】 

2017年から2018年に一定程度の高まりを見せたあと、2019年から2020年にかけて減少したが、ユニバーサルデザインのまちづくり推進への賛同率は2021年に再上昇。

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  • 心のバリアフリー (そう思う計)

    20216月】 

  • 「障害のある人が困っているときには、迷わず援助できる」(76.0%)、「障害のある人を自分たちの仲間に入れることに抵抗感はない」(70.1%)との心のバリアフリー意識は、ともに7割台で高い。

    5年間の推移】 

  • 2017年から2018年に一定程度の高まりを見せたあと、2019年から2020年にかけて減少したが、2021年、援助行動は再上昇。

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  • 障害者に対するステレオタイプ (そう思う計 ※反転項目)

    20216月】 

  • 「障害のあることはかわいそうだと思う」(42.5%)、「障害のある人は一方的に助けられるべき存在だと思う」(39.0%)との障害者に対するステレオタイプは4割前後存在。

    5年間の推移

  • 「障害のあることはかわいそうだと思う」は、2017~2019年の45~48%の水準に対し、2020年以降は42~43%の水準で推移。「障害のある人は一方的に助けられるべき存在だと思う」は、2017年から年々低減傾向にあったが、2021年に上昇した。

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  • 障害の捉え方 (そう思う計 ※障害の医学モデルへの賛同率は反転項目)

    20216月】

  • 障害の社会モデルへの賛同率(64.2%)は6割半である一方、障害の医学モデルへの賛同率(29.4%)は約3割。

    5年間の推移】 

  • 障害の社会モデルへの賛同率は、2017年から2018年に一定程度の高まりを見せたあと、2019年から2020年にかけて減少したが、2021年に再上昇。障害の医学モデルへの賛同率は、2017~2019年の31~34%の水準に対し、2020年以降は28~29%の水準で推移。

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 [問1 下記について、あなたの考えとして、もっとも近いと思うものに〇をつけてください。
  選択肢:非常にそう思う、そう思う、ややそう思う、どちらでもない、あまりそう思わない、まったくそう思わない]

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調査結果2.共生社会の実現度合評価

(0点(全く実現していない)~10点(完全に実現している)スケール)

 

要旨:5年間を通じて、共生社会が実現しているとの認識は低いまま推移し、ほとんど変化せず。

 

20216】 

2021年6月の日本の共生社会実現レベル(10点満点評価の平均値) は、4.0点。中央(5点)よりも低い採点者が6割弱を占め(04点計57.1%)、大半の人々は、20216月時点の日本には共生社会が実現できていないと考えている。

5年間の推移

過去5年間の評点は平均4.0~4.2点でほとんど変化せず、共生社会が実現しているとの認識は低いまま推移している。

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 [問 いまの日本の社会は、どの程度、「障害の有無にかかわらず、女性も男性も、高齢者も若者も、すべての人がお互いの人権や尊厳を大切にし支え合い、誰もが生き生きとした人生を享受することのできる共生社会」を実現していると思いますか。 0~10までの11段階でお答えください。(○は1つだけ)
  選択肢:0全く実現していない ~ 10完全に実現している]

  

調査概要

調査方法    NOS(日本リサーチセンター・オムニバス・サーベイ:定期的に実施する乗り合い形式の全国調査)
        調査員による個別訪問留置調査
調査対象    全国の15〜79歳男女個人
有効回収数   1,200人 ※エリア・都市規模と性年代構成は、日本の人口構成比に合致するよう割付実施
サンプリング  全国から200地点を抽出、住宅地図データベースから世帯を抽出し、個人を割り当て
調査期間    2021年6月調査=2021年5月30日~6月11日

 

■2020年までの調査結果詳細は、下記レポート(PDFファイル)をご参照ください。

ユニバーサルデザイン社会の実現度定点観測調査_第4回(2020年)結果レポート.pdf




NOS(日本リサーチセンター・オムニバス・サーベイ)とは


調査パネルを使ってインターネットで簡単に情報収集できる時代になりましたが、NOSでは、50年にわたって、
(1)調査員を使った訪問留置
(2)パネルモニターではない毎回抽出方式
で調査を継続しており、代表性のある信頼の高いデータを提供しております。
NOSは、定期的に実施する乗り合い形式(オムニバス)の調査です。毎回ランダムに決められた200地点にて、対象となる方に調査員が協力を依頼してアンケートを回収します。性年代構成を日本の人口構成比に合わせているため、全体結果は日本を代表する意見として、そのままご覧になることができます。インターネット調査では、回収が難しい高齢層やインターネットを使っていない人の実態や意識を分析するのにも有用な手法と言えます。

※ご依頼・ご相談は、ホームページの「お問い合わせ」よりご連絡ください。

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