NRCレポート
ユニバーサルデザイン社会の実現度定点観測調査【2021年12月速報】
~この5年間で障害に対する人々の意識はどのように変化してきたか 、 オリンピック・パラリンピック東京大会は何をレガシーに刻むか~(2017年~2021年12月までの調査結果より)公表日 2021年12月28日
日本リサーチセンター(本社:東京都、代表取締役社長:杉原 領治)は、1960年に設立された民間の調査研究機関であり、民間企業および官公庁、大学をはじめとする学術機関などの依頼を受け、各種の調査研究をおこなっています。
2021年夏、オリンピック・パラリンピック東京大会が開催されました。2020年2月以降の新型コロナウィルス感染症拡大により、大会の延期や縮小・中止を余儀なくされる取組等もありましたが、2020東京大会は基本コンセプトのひとつに「多様性と調和」を掲げ、大会までの数年間、日本各地で、共生社会の実現、ユニバーサルデザイン社会の実現、心のバリアフリーの推進を目指した動きが繰り広げられました。
日本リサーチセンターは、2017年から毎年、「ユニバーサルデザイン社会の実現度 定点観測調査」を実施し、社会の変化、人々の意識変化を追ってきました。開催年である2021年は開催前後(6月、12月)での調査を行いました。
オリンピック・パラリンピック東京大会は日本社会をどう変えたのか、何をレガシーに刻むのかーー。今回、2021年12月までの5年間の経過を速報としてお知らせいたします。
(詳細レポートは後日公開予定です。また、定点観測調査は2022年まで実施し、今後の推移も追ってまいります。)
- ユニバーサルデザインとは・・・障害の有無、年齢、性別、人種等にかかわらず、多様な人々が利用しやすいようあらかじめ都市や生活環境をデザインする考え方です。
- 障害の社会モデルとは・・・障害は個人の心身機能の障害と社会的障壁の相互作用によってつくり出されているものであり、社会的障壁を取り除くのは社会の責務であるとする考え方です。この障害の社会モデルの考え方の社会浸透状況を知ることによって、ユニバーサルデザイン社会の到達度測定を試みています。
調査結果1. 障害に対する意識(主要部分抜粋)
要旨:
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共生社会推進やユニバーサルデザインのまちづくり推進に対する意識、心のバリアフリー意識は、2018年・2019年に上昇がみられ、その後それより一段低いレベルで推移したが、過去5年間概ね高い水準を保った。但し、ユニバーサルデザインのまちづくり推進に対する意識については、上下動が見られ、東京大会より数カ月後の21年12月は2017年11月同様のレベルに低下した。
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障害に対するステレオタイプ(かわいそう、一方的に助けられるべき)、障害の医学モデルへの賛同は、5年間全体としては減少していく経過をたどった。
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障害の社会モデルへの賛同は、2017年の62.8%を起点に、2018・19年(68.0~68.5%)に上昇後、2020年に下降(60.3%)、さらに大会直前の2021年6月(64.2%)に上昇したのち、2021年12月には過去5年で最低レベル(56.3%)に下降するM字型に推移してきた。なお、頂点の2018年以降、大きくは下降トレンドにある。
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- 障害に対するステレオタイプは減少し、「障害の医学モデル」への賛同率は低下してきている一方で、「障害の社会モデル」(社会のあり方・社会的障壁が障害の原因になっていること)の理解・浸透は、この5年間で進んでこなかったことが明らかになった。
社会のあり方に対する考え
(そう思う計)
【2021年12月】
共生社会推進への賛同率(90.9%)、ユニバーサルデザインのまちづくり推進への賛同率(85.0%)は、8割半~9割と高水準。
【5年間の推移】
2017年から2018年に一定程度の高まりを見せたあと、2019年から2020年にかけて減少したが、2021年6月にかけて、ユニバーサルデザインのまちづくり推進への賛同率は再上昇。しかし2021年12月には再び減少に転じている。
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心のバリアフリー
(そう思う計)
【2021年12月】
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「障害のある人が困っているときには、迷わず援助できる」(75.1%)、「障害のある人を自分たちの仲間に入れることに抵抗感はない」(71.6%)との心のバリアフリー意識は、ともに7割台で高い。
【5年間の推移】
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2017年から2018年に一定程度の高まりを見せたあと、2019年から2020年にかけて減少したが、2021年6月にかけて、援助行動は再上昇。2021年12月もほぼ同水準。
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障害者に対するステレオタイプ
(そう思う計)
【2021年12月】
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「障害のあることはかわいそうだと思う」(40.3%)、「障害のある人は一方的に助けられるべき存在だと思う」(34.1%)との障害者に対するステレオタイプは3割半~4割。
【5年間の推移】
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「障害のあることはかわいそうだと思う」は、2017~2019年の45~48%の水準に対し、2020年以降は40~43%の水準で推移。「障害のある人は一方的に助けられるべき存在だと思う」は、2017年から年々低減傾向にあったが、2021年6月にかけて上昇した後、12月には減少。いずれも、過去5年間で最も低いスコアとなった。
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障害の捉え方
(そう思う計)
【2021年12月】
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障害の社会モデルへの賛同率(56.3%)は5割半に対し、障害の医学モデルへの賛同率(23.7%)は約2割強。
【5年間の推移】
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障害の社会モデルへの賛同率は、2017年から2018年に一定程度の高まりを見せたあと、2019年から2020年にかけて減少し、2021年6月に再上昇した後、12月に再び減少し、56.3%と過去5年間で最も低いスコアとなった。障害の医学モデルへの賛同率は、2017~2019年の31~34%の水準に対し、2020年から2021年6月は28~29%の水準で推移。2021年12月はさらに減少し、23.7%と過去5年間で最も低いスコアとなった。
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[問1 下記について、あなたの考えとして、もっとも近いと思うものに〇をつけてください。
選択肢:非常にそう思う、そう思う、ややそう思う、どちらでもない、あまりそう思わない、まったくそう思わない]
調査結果2.共生社会の実現度合評価
(0点(全く実現していない)~10点(完全に実現している)スケール)
要旨:
5年間を通じて、共生社会が実現しているとの認識は低いまま推移し、ほとんど変化せず。
【2021年12月】
2021年12月の日本の共生社会実現レベル(10点満点評価の平均値) は、4.2点。中央(5点)よりも低い採点者が半数を超え(0~4点計54.6%)、多くの人々は、2021年12月時点の日本には共生社会が実現できていないと考えている。
【5年間の推移】
過去5年間の評点は平均4.0~4.2点でほとんど変化せず、共生社会が実現しているとの認識は低いまま推移している。
[問 いまの日本の社会は、どの程度、「障害の有無にかかわらず、女性も男性も、高齢者も若者も、すべての人がお互いの人権や尊厳を大切にし支え合い、誰もが生き生きとした人生を享受することのできる共生社会」を実現していると思いますか。 0~10までの11段階でお答えください。(○は1つだけ)
選択肢:0全く実現していない ~ 10完全に実現している]
調査概要
調査方法 NOS(日本リサーチセンター・オムニバス・サーベイ:定期的に実施する乗り合い形式の全国調査)
調査員による個別訪問留置調査
調査対象 全国の15〜79歳男女個人
有効回収数 1,200人 ※エリア・都市規模と性年代構成は、日本の人口構成比に合致するよう割付実施
サンプリング 全国から200地点を抽出、住宅地図データベースから世帯を抽出し、個人を割り当て
調査期間 2021年12月調査=2021年11月29日~12月11日
■2020年までの調査結果詳細は、下記レポート(PDFファイル)をご参照ください。
ユニバーサルデザイン社会の実現度定点観測調査_第4回(2020年)結果レポート.pdf
株式会社 日本リサーチセンター
担当:広報室 information@nrc.co.jp